CSRの本質ーわが国のCSRの変遷

1-1-1. 企業の社会的責任
1930年代以前に日本では「企業における所有と支配の分離」
現象が論じられるようになり、「企業を社会的存在と位置づ
ける見方」(足達・金井2004)が定着するようになった。
そもそも農耕民族たる日本人は、欧米にみられるような個人
主義的文化はなく、村社会にみるコミュニティビジネス
が昔から発展していたと思われる。例えば、


明治の実業家は自分の資産を投じて地域のインフラ作りや
学校作りに関心を示し、地域社会を大切に思う考えが定着
していた。その後も日本企業は自らの利益のみを追求する
ことなく、家訓や企業理念として「顧客、地域社会との共
存共栄を図るべし」という教えが存在しており、近江商人
にみる「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よ
し」の商い哲学はまさに現代のステークホルダー論と同様
の経営思想であったといえる。こうした企業における所有
と支配の分離はやがて「公の器」として政府が手に負えな
い私的部分を企業が一部肩代わりするという社会役割を担
うようになる。つまり、欧米発のCSR的意識が輸入される
以前に日本の事業経営の中にはこうした理念や節度が古く
から根付いていたわけだが、少なくとも江戸時代から戦前
に至るまではこのような意識が社会を支え企業を成長させ
てきた。では戦後の日本企業は如何なるものか戦後企業の
CSRに至る変遷を探ってみる。

1-1-2. I期~V期の概要
第I期(1960年代)
企業の私的利益優先の結果公害問題による人的被害をもた
らし、工場から流される有毒ガスや水質汚染による公害病
(水俣病)、薬害(サリドマイド)被害は今なお被害者と
の対立が続くなど、企業の横暴さが目立つ時期であった。
この結果1967年に公害対策基本法が成立する。

第II期(1970年代)
日本列島改造論を背景に、第二次価高騰期による商社の行
き過ぎた商品投機が問題となった。また、オイルショック
による企業間の便乗値上げ、買占めや売り惜しみなど生活
関連物資の高騰が起こり、消費者からの企業への反感が増
幅するようになる。こうした企業の利益至上主義が台頭し
、1973年に変動相場制へ移行すると独善的企業体質と高
度経済成長期の企業批判が最高潮を迎える。

第III期(1980年代)
この時期、一時的に企業の社会的貢献は騒がれなくなるが
、1985年のプラザ合意により急速な円高が進み、日本企
業はグローバル化の時代に突入する。その後もバブル最盛
期に入り、人々の生活においても米国の文化が浸透し始め
た。やがて、消費がひとつのステータスとなり、人々は豊
かさを求めるようになる。日本企業における海外進出も進
み、国際化の時代を迎える。この時期「良き企業市民」の
考え方が導入され、学術・芸術・福祉・国際交流など企業
財による社会貢献が活発となる。1989年企業メセナ協議
会、1990年に経団連1%クラブ*1が設立される。

第IV期(1990年代)
1991年バブル崩壊により地価の下落がはじまり、証券会
社の損失補填、金融機関の破綻、建設業の談合事件などが
続き企業不信を招く。経団連は企業行動憲章*2を策定し、
現代のCSRの原型を作る。また環境問題関連で1992年に
地球サミットの開催、1996年にはISO14001が発行され
る。

第V期(2000年代)
この時期にはSRIの先駆けとなるエコファンドが登場し、
SRIがCSR評価の中心となる。また欧米からの環境問題に
対する企業への攻勢もあり、次第に企業統治や社会性が
問われるようになった。さらにこの時期特に印象に残る
のは雪印乳業、日本ハムその他食品偽装などによる企業
不祥事が発覚し、企業倫理やコンプライアンス(法令遵
守)、アカウンタビリティ(説明責任)、ディスクロー
ジャー(情報開示)がより一層求められるようになる。
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1.86年、89年の二回に渡り欧米に社会貢献調査ミッション
を派遣し、米国に1%クラブや3%クラブなど、いわゆる
「パーセントクラブ」があることを学ぶ。その後経常利益
の1% 以上(法人会員)、可処分所得の1%以上(個人会員
)目安に社会貢献活動のために拠出することに勤める企業
および個人を支援する等を目的とする。
2.KeidanrenCorporateBehaviorCharter1996年12月17日
に発行。しかし、その後も社会的常識からかけ離れた企業
行動の見直しや自己規律の強化から2002年、2004年と
改定が行われた。

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