デュアルスタンダードから「脱欧入亜」へシフト政策

先頃都内で行われた平壌遷都1300年記念経済フォーラム
ではこれからの「日本の進むべき方向性」が示された。
青山学院大学教授、榊原英資氏は「今は経済の主役が150年
ぶりに交代する「リオリエント」現象にあり、近代資本主義
が終わりを告げる転換期だ」と述べ、金融統合などの議論の
必要性を訴えた。

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1300年前の状況と現在の状況は、かなり似ていると思う。
1300年前、日本は当時の経済・文化大国である中国から、
文字や思想を含めて様々なものを取り入れた。中国は日本
の歴史にとって、圧倒的な影響力を持つ国であった。

今日、中国が再びナンバーワンの国になりつつある。高度
経済成長を続ける中国は、2030~40年ころには、GDPが
米国を抜くという予想も出ている。経済の中心が中国、そし
てインドに戻る「リオリエント」の現象である。

私たちは中国文明の圧倒的な影響力で、和漢折衷の歴史を長
い間築いてきた。しかし、明治維新以降は、欧州の影響で和
洋折衷という形のダブルスタンダードに移り、戦後は米国の
スタンダードが中心になっている。

今後「リオリエント」現象が進む中で、中国・東アジアに目
を向けなければならない。平城京の時代を参考にしながら、
未来を築いていく必要がある。

民主党政権の掲げる東アジア共同体構想は優れたものである
と思っているが、実は経済の面では、市場が主導する形で、
すでに統合が進んでいる。東アジア域内13カ国の域内貿易
比率は57%を超えており、あと5年くらいで60%に達する
見通しだ。

EUの域内貿易比率は65%だから、すでにEUに近いところ
まで進んでいるわけだ。域内では生産ネットワーク、サプラ
イチェーンネットワークがすでにできており、その中心に
日本企業がいるということを、認識しなければならない。

もう1つ強調したいのは、東アジアがマーケットとしても大
きく育っているという事だ。特に巨大マーケットである中国
に、どう進出できているかは、日本企業の成長力を測る大き
なカギになる。

生産と販売の両面で、日本と東アジアを一体のものと考えるこ
とが重要だ。市場がすでに一体化しているのに比べ、制度設計
は遅れている。国際金融という面でも、まだコーディネートさ
れていない。しかし、今後20年~30年先には、ユーロのような
共通通貨ができるだろう。

すでに域内13カ国で、いったん危機が起きた場合には、お互い
の外貨準備を貸し付け合うという、スワップ協定が結ばれてい
る。今後はアジア通貨基金をつくるべきだろう。東アジア13カ
国には総計4兆ドルに上がる外貨準備がある。そのうちの例え
ば5%でも、共同で運営するようにできれば、域内通貨の安定
に寄与するはずだ。

中国の元は日本の円と同じように、これから長い時間をかけて
切り上がっていくだろう。中国と日本が中心になって、通過の
安定政策を進めるべきだ。この2国に韓国も加えた3国で、
金融統合についての議論を始める時期にきている。

経済や金融に限らず、政治などさまざまな面で、東アジアに
どういう制度をくっていくのかの制度設計を考える時期だと
思う。

政治的には、日本と中国、韓国との間には、過去の歴史的経緯
もあって緊張関係が残っていよう。しかし、欧州の統合も
ドイツとフランスという、第二次世界大戦の敵対国同士が主導
して進めてきたのだ。私たちにもできないはずはない。

文化的な連携をどういう形で進めるかも考える必要がある。
例えば漢字。韓国はハングル文字に変わっているし、中国でも
簡体字が相当使われている。しかし、韓国ではハングル文字
だけでは不便だということで、漢字復活の機運が出て来ている。

経済的な面だけでなく、こうした文化的な面での連携という
ことも考えると、東アジアにどういう新しい文明をつくるかと
いうことにまで行き着く。平城京の時代を思い起こす意義は
そこにあるわけだ。

ギリシャの経済危機は、欧州の他の国にも深刻な影響をもた
らし、欧州の没落につながりそうな気がしてならない。米国
の資本主義・金融システムも一昨年のリーマンショックによ
り破綻した。一方で中国やインドなどは成長を続けている。

経済の主役がおよそ150年ぶりに交代する「リオリエント」
現象は、近代資本主義が終わりを告げる歴史的な時代の転換
を示すものと言える。

その中で日本の立ち位置を考えた時、明治以来の「脱欧入亜」
に考え方をシフトし、国の政策や企業のビジネスモデルを大
きく変えていくことが、非常に重要だと考えるわけだ。

ただし、平城京の時代に立ち返ると言っても、当時の日本は
中国から一方的に学ぶだけだった。今はお互いに補完し合う
立場にあるので、その中でどういう関係を築いていくのかを
考えなけらばならない。

日本という国は他の国に征服されたことがないため、非常に
質の高い、ユニークな文化をつくってきた。21世紀はこの
日本が育ててきた文化を、世界にアピールする時代、日本が
情報を発信し、世界に影響力を持ちうる時代ではないか。

アジアの時代というのはすなわち日本の時代、日本がリード
して情報を発信する時代であると思う。
問題はその日本の情報発信力が弱いということだ。国際言語
である英語力が弱い。英語教育を決定的に変える必要がある。

それと私たちはもっと、日本という国に自信を持つべきだ。
過去の歴史を学び、どういう文化、文明を作ってきたのか
、本来の日本のデュアルスタンダードとは何かということを
知るべきだろう。そして、どんどん世界に飛び出し、情報を
発信していくことが大切だと思う。
(日本経済新聞「2010年からの転換と展望」2010/6/15
 青山学院大学教授 榊原英資)

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