「社会起業家」が日本を変える(西田亮介 社会学者)

今、オルタナティブな流れや斜めの関係が注目を集めている。
「事業型NPO」の先駆者として活動を始めた今村(カタリバ)
駒崎(フローレンス)岡崎(マイアース)の起業家たちの新
し生き方や特性、可能性を紹介する。

彼らは大学(慶応義塾大学SFC)で学んだ「社会的使命感」
をもとに助成金などに頼らない経営で業界に風穴を開けた
として知られている。前者の二人はNECなど社会起業家養成
のために03年に立ち上げた「NEC社会企業塾ETIC」に参加し、
そこで知り合った起業家仲間にも影響を受けている。



しかし、社会起業家には課題も多い。NPO法人に目を向ける
と、増加を続けているが、3000万円以上の売上げ高を持つ
法人は15%しかなく、大半は小規模で国や自治体からの助成
金に依存している。事業体の会計や助成金の審査が不透明な
ケースもよく指摘されている。

若い起業家が注目される一方で、既存の社会貢献分野の事業体
運営者が高齢化が多く、将来の人材不足も懸念される。
こうした状況を駒崎氏ら3人も認識している。たとえば3人は
創業時の助成金の有効性は認めつつ、長期的には自律事業化す
るしかないという。

そのために駒崎氏が強調するのは、公益法人などと公平に競争
できる環境作り。駒崎氏が「新しい公共」円卓会議で提案した
「社会事業法人」は、利益分配しない株式の発行を認め、中小
企業に近い枠組みで活動する新しい法人格だ。

現行のNPO法には、設立の許認可や活動分野、寄付控除を受け
られる認定法人の許認可など多くの規制がある。このような
制約が社会起業家の創意工夫や試行錯誤を妨げ、新たな企業を
阻害する要因にもなっている。

このように、日本の社会起業家をめぐる環境や政策は未成熟だ
が、逆に多くの可能性を秘めていると見ることもできる。
実際、さまざまな新しい兆しがある。

そのひとつが「オープン・ガバメント」の流れである。
これは、政府を政策のプラットフォームとみなし、データおよ
び分析ツールを公開することで、民間の自律的な問題解決能力
を後押しする、新しい政治参加の枠組みだ。

マイクロソフト創業者ビル・ゲイツや著名な投資家ウォーレン
・バフェットが提唱する「創造的資本主義」も、企業のイン
センティブと社会問題解決を結びつけることで、企業の資本と
手段を用いて、その解決を目指すという考え方だ。

日本でも、橋本龍太郎政権の行政改革、小泉純一郎政権の
「新しい公共空間」を経て、民主党政権の「新しい公共」
につながった。このような行政改革と政治過程のオープン化
は菅政権でも継続されるはず。

その意味で、社会起業家を含むソーシャルセクター、ひいて
は日本の政治的枠組みの再検討は、今夏の参議院選でも重要
な争点となろう。今、私たちが必要とするのは、いかにして
コンセプトを実装するかという具体的な政策論だ。

その鍵は、駒崎氏のいうように規制緩和と改革にある。
「新しい公共」円卓会議を含め、既存の政府の社会起業家
支援策は、もっぱら財源を議論してきた。「金」ではなく、
「恊働のエンパワーメント(自主的取り組み支援)」への
シフトが必要だ。

日本に社会起業家第1世代が現れて約10年。社会起業家
という存在は、日本社会にとって雇用確保や新しい働き方
としても、また社会的活力の源泉としても、重要性が一層
増している。
(週刊エコノミスト2010/6/22 西田亮介 社会学、
独立行政法人中小企業基盤整備機構リサーチャー)

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