石油と天然ガス、ミャンマーと中国へのパイプライン

ミャンマーから中国へ石油と天然ガスを運ぶパイプラインの敷設
工事が始まった。完成すれば、米欧諸国などから経済制裁を受け
ている軍事政権にとって貴重な外貨収入源になる。中国にとって
は戦略的なメリットが大きい。両国の相互依存は一気に深まる。

「中国とミャンマーの関係は新たな歴史的出発点にある」。
中国の温家宝首相は3日、ミャンマーの首都ネピドーでテイン・
セイン首相と会談した際、こう語った。同日、ベンガル湾に面し
た西部のラカイン州チャウピューでパイプラインの工事が動きだ
した。

チャウピューから中国雲南省の昆明まで原油用と天然ガス用の2
本を建設する。総延長は原油用で約900キロ。中国最大のエネ
ルギー会社、中国石油天然気集団(CNPC)によると、同社の傘
下企業がパイプラインの設計から建設、運営、拡張まで責任を持
つ。ほぼ全国的にCNPCが切り盛りするとみられる。

稼働後は年間2200万トンの原油と同120万立方メートルの
天然ガスを運ぶ。2009年の中国の原油輸入の1割強、天然
ガス輸入の1・5倍に相当する量だ。中国商務省は11年にミャ
ンマーからの天然ガス供給が始まるとしている。

ミャンマーの外貨不足は深刻だ。通過チャットの対ドル実勢レー
トの200分の1という異常事態に陥っている。民主化勢力の
指導者であるアウン・サン・スー・チー氏の軟禁解除など、同国
の民主化を求めて米欧などが科している経済制裁は、深刻な打撃
を与えている。

それでも軍事政権は、年内に実施する総選挙からスー・チー氏
を閉め出すなど、強気の姿勢を崩していない。その一因として
、近隣諸国、とりわけパイプラインを軸とする中国との関係拡大
が指摘されている。原油と天然ガスの対中輸出は、ミャンマーに
とって有力で安定した外貨獲得のルートとなるからだ。

軍政にとっては政治・外交の面でも中国は頼りになる。例えば
国連安全保障理事会でミャンマー非難決議の採決を阻んできた。
パイプラインのメリットは中国にとっても大きい。重要なのは
エネルギー安全保障の面だ。

現在、中国が輸入する原油は7割以上がマラッカ海峡を経由し
ている。有事に米軍が同海峡を封鎖する可能性は、中国にとって
脅威だ。同海峡を通さない原油調達ルートとなるパイプラインの
敷設は、CNPよりむしろ中国軍が渇望してきたとの見方がつよい。

急速に深まる両国の相互依存関係だが、国力を考えるとミャンマ
ーが対中依存を深めているのが実態だ。インドや米国では、この
地域での中国の影響力拡大を警戒する声が強まっている。

ここにきて重大な問題も浮上してきた。軍政が北朝鮮の協力で
核兵器の開発を進めている、という疑惑だ。事実なら、米欧の
圧力を跳ね返して生き残ろうとする、軍政なりの「瀬戸際戦略
」とみられる。中国の対応が問われる。(編集委員 飯野克彦)

日経新聞2010/06/09/

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