受託者責任

企業はNGOや株主など色々な所からの圧力を受けるわけですが、受
託者責任もそのひとつです。しかしこれらの圧力が強ければ企業も
疲弊しかねません。では今後株主総会で考えられる受託者責任とは
どのようなものか考えてみましょう。

今週は上場会社の株主総会が集中する特異週。株主総会は、受託
者責任を負う、所有と経営が分離した株式会社の経営者と、他人の
財産を運用する機関投資家の対面の場だ。 手本の米国モデルがゆ
らぐ中で、受託者責任を考える機会である。

日経ヴェリタスに連載中の井手正介氏の「『株主価値を重視する経
営』とは」は金融資産の市場価値最大化思想の系譜をたどり、米国
の投資文化を解き明かして興味深い。人間は天職を通じて神の摂理
の「良き管理者」であらねばならないとするプロテスタントの倫理
によれば、財産の管理者が財産を殖やすのは神の意志に沿う行動で
あるという「グッドマネジャー論」は受託者責任論そのものだ。

先進国の米国は受託者責任を全うさせるために、ストックオプショ
ンや成功報酬などのインセンティブ制度を導入した。結果はどだっ
たか。利益は山分けしても損失は分担しない欠陥制度は、過大リス
クを取った一時的な利益で法外な報酬を得た受託者を富豪にする一
方、株主や資金提供者の核心は忠実義務と善管注意義務。

受託者など依頼人の利益のみを考え、分別ある専門家の慎重な判断
(プルーデント・マン・ルール)を求められる古典的過大が未解決
なだけではない。新しい現実は、運用資産の膨張で機関投資家の行
動が企業や市場、経済に及ぼす影響が無視できなくなった現代にお
ける受託者責任とは何かだろう。

井手氏の分析によれば、株主価値最大化を求められた米国の企業は
、最良企業ほど利益率を保つために投資を避けて縮小近郊に陥るか
、M&A(合併・買収)や金融事業の拡大で金融機関的ビジネスモデ
ルに変質する傾向がある。資本コストをカバーできない価値破壊は
論外だが、企業本来の価値創造の観点から、相対的には低収益でも
本業の持続的な成長を達成する日本的優良企業が評価されていいと
いう。同感だ。

企業に圧力をかける投資家、(株主)が実態経済を無視して高いリ
ターンを要求すれば、健全な経営を阻害する事もあり得る。巨大な
資金を運用するようになった機関投資家はヘッジファンドなどを通
じ、ブラックボックス化した証券化商品や原油先物などの商品ファ
ンドに投資する洗練された投機家になっている。

受託者責任を全うしようとする行為が企業を疲弊させ、物価の高騰
を招くなど経済変動を増幅し、生活者である受益者を苦しめている
とすれば本末転倒だ。経営者は株主以外にも社会に貢献する企業の
使命を果たし、機関投資家は受益者の生活にも目配りするのが真の
受託責任だろう。依頼人の要求が不当なら、たしなめるのも責任の
うちだ。

全国証券取引所の株主分布状況によれば、上場会社の株主の2/3を
純投資目的の株主が占める。法人資本主義から機関投資家資本主
義から機関投資家資本主義への移行が始まった日本でも、受託責任
をどう考えるかは重たい問題だ。
(日本経済新聞2009/6/23投資・財務p17)

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